【ビブリオバトル】米澤穂信 「儚い羊たちの祝宴」 究極の合理性・忠誠心・保身、そして過剰な悪意

儚い羊たちの祝宴

スポンサーリンク
スポンサードリンク

本の書評合戦『ビブリオバトル』

皆さんは、ビブリオバトルをご存知でしょうか?その言葉どおり『自分の好きな本のプレゼンバトル』です。

私は紀伊国屋書店新宿南口店で行なわれたビブリオバトルに参加したことがあります。結果は惨憺たるもので、緊張のあまりロクに喋れなかったのが残念でしたが、自分の好きな本について語るのは楽しいものですね。

私が紹介した本は米澤穂信の傑作短篇集「儚い羊たちの祝宴」。生涯で読んだミステリ小説の中でもトップクラスの衝撃を受けた、私が心からオススメする小説です。フィニッシングストロークと呼ばれる、最後の一行で物語が全てひっくり返る脅威のどんでん返しの威力が凄まじく、思わずニヤリとしてしまうこと必至。

つい最近刊行された「満願」という短篇集も同じ流れを汲む傑作です。ぜひ併せて読んでもらいたいところです。

さて、このビブリオバトル用に作成した資料を、せっかくですのでブログにもアップしておこうと思います。面白さが伝わると嬉しいな。

米澤穂信『儚い羊たちの祝宴』

私が今回紹介する本はこちら、米澤穂信の「儚い羊たちの祝宴」です。

この作品は、五つの短編で構成された「連作短編集」。

それぞれ話に直接的なつながりはないのですが、「バベルの会」という、浮世離れした上流階級のお嬢様が集う読書サークルの存在が、それぞれをゆるく繋いでいます。

今回は、新潮社から刊行された「ストーリーセラー」というアンソロジーにも収録された「玉野五十鈴の誉れ」という、ホラーとして恐ろしく完成度の高い作品を軸に紹介します。

話の舞台はおそらく昭和初期あたり、「お父様、お母様」という呼び名が当たり前で、子どもにも側仕えの使用人がいるような大金持ちの小栗家。物語の語り手はそのご令嬢であり跡取り娘である15歳の「小栗澄香」。そして、その澄香に付く使用人が、この短編のタイトルにもある同い年の「玉野五十鈴」です。

絶対的な権力者として立ちふさがる小栗家の当主、おばあさまには一切反抗することなどできず、言われるがままの人形として生きていた澄香は、自分の誕生日に使用人として与えられた五十鈴と過ごすことで、人生に活路を見出します。

玉野五十鈴の誉れ

五十鈴は利口でユーモアに溢れ、所作も上流階級の使用人としては完璧なものを備えていました。しかし、五十鈴には狡猾なところもあり、権力に従うことが当然と思っていた澄香に新しい世界を見せてくれました。

ところが、あることがきっかけで澄香は跡取り候補から外され、小栗家の面汚しとして、いないものとして扱われるかのように小栗家の末室に軟禁状態にされます。しかし澄香にとってショックだったのは、そんなことよりも、五十鈴を使用人から外されることでした。

ふたりは雇い主の孫娘とその使用人という間柄ですが、澄香にとって五十鈴は大切な友人でもあり、世界を広げる多くの知識を与えてくれた先生でもありました。例え理不尽な仕打ちから跡取りを外され、小栗家の面汚しとして扱われることになったとはいえ、今まで培ってきた人間的な情がふたりを分かつことはないと確信していた澄香。無表情な五十鈴に「ねぇ笑って」と言った澄香に返された言葉は非情なものでした。

「それは、お言いつけですか?」

玉野五十鈴の誉れ

玉野五十鈴は言います。

「言いつけを愚直に守り、ひたすら役目を果たすことが、わたしの誉れ」

五十鈴にとって、澄香はただの「雇い主の孫娘」。雇い主からの言いつけだから従っていたまでのこと。ただそれだけだったと分かった澄香の絶望は、五十鈴に出会わなかった方が良かったとさえ思えるほどのものだったでしょう。それでも澄香は五十鈴のことばかり考えて日々を過ごします。

この後小栗家には新たに男児が生まれ、名実ともに澄香は小栗家に不要な存在になります。

存在する必要の無くなった澄香がこの後どうなるか、ホラーやミステリーが好きな方ならなんとなく想像できてしまうと思いますが、そう簡単に想像できる結末ではない、とだけお話しておきます。

さて、才知溢れる五十鈴ですが、唯一苦手としていたことが「料理」でした。五十鈴が米をたくと、生米のままか糊になると澄香に笑われるほど。そんな五十鈴に澄香は米を美味しく炊ける、ある合言葉を教えます。

「始めちょろちょろ、中ぱっぱ、赤子泣いても蓋取るな。」

はじめチョロチョロ中ぱっぱ

雇い主の命には極めて忠実で、言葉どおりに実直に行なうことを自分の「誉れ」としている五十鈴がどのような行動を取ったか、それは皆さんが実際に読んで確かめてみてください。

正直、この話に共感できる部分はあまりありません。登場人物の誰かに感情移入して読もうとするよりも、描かれる純粋な悪意を、傍観者として、人形劇として楽しむのがもっとも適していると私は思いました。

また、本書の主要な登場人物は、全て女性です。非常に耽美な文章から、いわゆる百合小説的な読み方もおもしろいのではないかと思いますね。

以上です。ありがとうございました。

語りたくてたまらない本を持っている方は、参戦してみては?

ビブリオバトルでは、こんな感じで5分間のプレゼンを行ないます。

私は物語のあらすじをメインとして話しましたが、人によってはテーマの周辺のみを語って物語を想起させる手法で挑んだり、はたまた全く関係のない話から攻めたりとバラバラなのがおもしろいんです。

語りたくて仕方がない本を持っている方は、ぜひビブリオバトルに参加してみてはいかがでしょう?YouTubeにプレゼン動画がアップされていたりするので、気になる方はぜひ参考にしてみてください♪


スポンサーリンク
スポンサードリンク
スポンサーリンク
スポンサードリンク