映画『リュウグウノツカイ』女子高生集団妊娠事件。…悲惨?いや、彼女たちにあるのは希望。

リュウグウノツカイ

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センセーショナルな題材が灯す、希望の光

女子高生が集団妊娠を計画。この衝撃の題材には、実はモデルがありました。

2008年、アメリカのマサチューセッツ州のある高校で、18人(とされている)の女子高生が一斉に妊娠するという事件が起きました。元々この高校では他校に比べて妊娠する生徒が多かったそうですが、約半数の生徒は協定を結んで妊娠したことを認めたといいます。

「何も考えていないバカな生徒たちのご乱心」と受け取る人も多いかと思いますが、遊び心や面白半分ではなく、「自分のことを無条件に愛してくれる存在がほしかった」がために、ことに及んだと言われています。愛を与えられず、寂しさや息苦しさ、訳の分からない不安に苛まれた末の行動だったのかもしれません。

リュウグウノツカイ

映画『リュウグウノツカイ』は、そんな事件をベースに、舞台を開発工事で漁業不振に陥っているある日本の田舎町に移して制作されました。仲良さそうに浜辺で遊ぶ女子高生たちの若々しさと、開発中の工事跡や重機の重苦しさが相まって、酷い閉塞感に満ちています。

まずはあらすじをご紹介しましょう。

あらすじ

開発工事の影響で漁業不振に陥っている田舎の小さな漁師町。

重機のノイズが轟く浜辺で、それをかき消すように大声を上げて遊ぶ女子高生のグループ。輪に入らず、ひとり浜に座る真姫(寉岡萌希)は海に浮かぶ大きな工事船を見つめている。

グループの中で唯一、開拓工事側で働く親をもつ孝子(佐藤玲)は、不漁の影響で家庭が崩壊してしまった真姫に後ろめたさを感じている。

グループのリーダーである幸枝(武田梨奈)は明るく振舞い、ふたりの関係を取り持とうとしていた。

リュウグウノツカイ

ある朝、日課である浜の水質調査を行う少女たちの前に巨大な深海魚が現れる。気持ち悪くも美しい謎の深海魚「リュウグウノツカイ」―。この魚には「豊漁の兆候」「災いの予兆」という両極端な言い伝えがあった。

そして3年前に上京した同級生・千里(樋井明日香)が町に戻ってくる。

偶然のようで必然のような日々に得体の知れない不思議な衝動を感じた真姫は集団妊娠計画を思いつく―。閉ざされた環境を打開するため、自らの手で未来を切り開こうと奮闘する少女たちの物語。

「みんなで産もうよ赤ちゃん。私たちの国つくろうよ」

とんでもなく重苦しいテーマであるにも関わらず、いびつなほど明るく描かれているこの映画。基本的には青春映画の体裁をとっているんですが、その希望や明るさを担保しているのが「集団妊娠」なので、私たち観客はどう表情を繕っていいのかわからなくなることもしばしば。

閉塞感に満ちたこの狭い世界で、おもしろくないなりに楽しく過ごそうとする女子高生たち。授業を抜けだして浜辺で遊ぶ姿は微笑ましく見えますが、心底楽しくてそうしているわけでもない。他にすることがないんです。

リュウグウノツカイ

家庭はすでに崩壊し、役に立たない父親を尻目にひとりご飯を食べる主人公の真姫。そんなある日、3年前に上京した千里が町に戻ってきた。芸能活動で芽が出ず嫌気が差して遊びほうけた結果、妊娠してしまったことを聞いた真姫は、みんなの前でこう言います。

「みんなで産もうよ赤ちゃん。私たちの国つくろうよ」

リュウグウノツカイ

実はそのとき、真姫も妊娠していました。父親にあたる男は甲斐性なし。堕胎費用として1万円を渡してくるような男だから、きっと夫には向かないでしょう。「こうなったら、みんなで妊娠して、みんなで生きていこうよ!」そう言いたかったのかもしれません。

「豊漁の兆候」と「災いの予兆」、両極端なふたつの言い伝えを持つリュウグウノツカイがこの浜に初めて打ち上がったのは、彼女たちが生まれた年のことでした。そして今、またリュウグウノツカイが打ち上がった。人生を変えるのは、今しかない。

自分の未来は、自分で切り開く

このまま生きていても、どうせ人生どん詰まり。それじゃあ一丁この希望に乗っかってみますか!とばかりに、女子高生たちが取った行動は迅速でした。彼女たちがしたいのは妊娠であって、結婚ではありません。年齢・仕事・立場なんて関係なく、手当たり次第見つけ次第、町中にいる男たちに直接申し込みます。「妊娠させてください!」と。

リュウグウノツカイ

花の女子高生たちに積極的に駆け寄られて、「断固としてNoと言えるオトナ」はいるのか。この映画を見ていればおのずとわかります。次々と妊娠していく女子高生たち。1日3人とセックスしても妊娠できない子は、これからは1日5人としなさいと先に妊娠した子に命令されるほど、いびつな受胎ヒエラルキーが生まれていきます。

俳優の斎藤工さんが寄せたコメントにはこうありました。

男性からしたらば
恐ろしい時代・・
いや、”来るべき時”が来てしまったのかと思わされる
今こそ向き合うべき作品

この映画で描かれる男は、総じて頼りない存在。女という輝かしい「生」の生き物に、子種を振り撒くだけの役割でしかありません。

女子高生たちが選んだ明るい未来に、男は必要なかった。この息苦しい世界から脱出するためには、自分たちを肯定してくれる存在がいればそれでよかった。遠くには我が子だし、近くには集団妊娠を計画した「ゆるいつながり」の仲間たちがそれにあたります。

彼女たちは自分を異物として扱う世間なんてどうでもよかったし、そんな世間体なんてものに縛られていたら、いつまでたってもこの境遇から抜け出せないことを知っていました。だから集団妊娠に望みを託したのでしょう。

リュウグウノツカイ

結果はどうか。

妊娠してからの彼女たちは、生きる希望に満ち溢れていました。何しろ、お腹の中には生の息吹を感じさせるもので溢れているのですから。もちろん親の支援も得られない学生の身で、どうやって子どもを育てていくのかという疑問を観客は抱くでしょう。

ですが、そんな心配は彼女たちに必要ありません。というか、きっと「余計なお世話」なのでしょう。

「じゃああなたたちは、私にどんな希望を与えてくれるんですか?」

そう問われたとき、私たちに何が言い返せるでしょうか。彼女たちは「自分たちで考えてできる範囲で、最も幸福を得られるであろう選択肢を選んだ」のです。

リュウグウノツカイ

「浅はかな妊娠できっと後々後悔するに違いない、彼女たちには想像力が足りない!」と憤るのは勝手ですが、彼女たちに「常識に縛られて自分の頭で考えなくなったのはそっちでしょ。想像力が足りないのはあなたたちじゃないの?」なんて言われるのがオチかもしれませんね。

たった60分の映画ですが、とても深いテーマを内包した考えさせられる良い作品です。女子高生それぞれが輝いていて、非常に魅力的なのもポイントですね。

女子高生姿がよく似合っている武田梨奈はもちろん、主人公の寉岡萌希、優等生からの豹変ぶりが見事な佐藤玲が本当にかわいい。テーマで毛嫌いしないのであれば、オススメできる映画です!

リュウグウノツカイ

リュウグウノツカイ

リュウグウノツカイ

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