映画「白ゆき姫殺人事件」噂が噂を呼び、拡散され、そうして犯罪はつくられる。

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「美しすぎる死体」の異名は伊達ではなかった

化粧品販売会社・日の出化粧品の若手社員だった三木典子(みき のりこ)が、国定公園に指定されていたしぐれ谷で殺されているところから映画は始まります。予告編などでも話題になっていた「美しすぎる死体」は、開始数分でお目にかかれます。三木典子役を演じたのはモデルの菜々緒で、その死に様は言葉を失うほどに美しい。たとえ心は闇に染まっていようとも、姿形の美しさは死んでも変わらかったとはなんという皮肉。このストレートなタイトルは、白ゆき石鹸を扱う会社で一番の美人が、めった刺しにされた上に火を点けられ殺されたことで話題をなり、世間で「白ゆき姫殺人事件」と揶揄されていくところから名付けられています。なるほど、リアリティがありますね。

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ソーシャルメディアが世界中に普及し、あらゆる人がツイッターやフェイスブックに興じることが当たり前になったこの時代だからこそ、生まれた物語といっても過言ではない本作。元は湊かなえによる同名の小説が原作です。小説では「マンマロー」というツイッターを模した架空のSNSが登場しますが、映画版ではツイッターそのものが使われています。これはツイッター社協力の下で実現したとのことです。

映画版のあらすじ

[note]http://www.shirayuki-movie.jp/information/
国定公園・しぐれ谷で誰もが認める美人OLが惨殺された。

全身をめった刺しにされ、その後火をつけられた不可解な殺人事件を巡り、一人の女に疑惑の目が集まる。彼女の名前は城野美姫。同期入社した被害者の三木典子とは対照的に地味で特徴のないOLだ。

テレビ局でワイドショーを制作するディレクター・赤星雄治は、彼女の行動に疑問を抱き、その足取りを追いかける。取材を通じてさまざまな噂を語り始める、美姫の同僚・同級生・家族・故郷の人々。

「城野さんは典子さんに付き合っていた人を取られた……押さえていたものが爆発したんだと思う、あの事件の夜」「小学生の頃、よく呪いの儀式をやってたって。被害者の殺され方が呪いの儀式と同じでしょう?」「犯人です、間違いありません!」。

テレビ報道は過熱し、ネットは炎上。噂が噂を呼び、口コミの恐怖は広がっていく。果たして城野美姫は残忍な魔女なのか? それとも──。
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井上真央演じる美姫の純朴さと、綾野剛演じる赤星の軽薄さ。

自分がまったくあずかり知らぬところで殺人犯にされ翻弄される主人公・城野美城(しろの みき)を演じるのは、映画「八日目の蝉」で第35回アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞した井上真央。何かにつけ同期の三木典子と比較され苦悩する様は、今までに見たことのなかった井上真央の演技力の真髄が垣間見えます。会社も、家族も、友人も、そして世間もが敵になる中で彼女が取った行動はなんだったのか。

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そしてもう一人の主人公は、テレビワイドショー『カベミミッ!』の制作を請け負う契約ディレクターの赤星雄治(あかほし ゆうじ)。友人から聞いた話からスクープの臭いを感じ取った赤星は、思い込みと偏った取材の結果だけを元に事件の真相を作り上げてしまいます。軽佻浮薄を地でゆくこのゲスな人間を演じたのは、なんと綾野剛!何かとかっこいい役の多い彼ですが、時折見せる死んだ魚のような目はこの役にピッタリで、意外な逸材だったかもしれません。

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サイバーカスケード・エンターテイメントの極み!

ソーシャルメディアを媒介として次々に噂や思い込みが伝染し、信じられないところから容疑者の名前が出され拡散し、もはや言い訳の余地はないところまで一気に追い詰められる様はあまりにリアルでおそろしい。人間の記憶や認識がいかに当てにならないものなのかよくわかります。間違いなくこの作品は、稀代のゴシップエンターテイメントですね。

映画のブログさんのこちらの記事(『白ゆき姫殺人事件』 雪がひらがなの理由)によると、インターネットで一方的な意見が多数を占め、その拡散に歯止めが効かなくなることを「サイバーカスケード」と呼ぶそうです。確かにソーシャルメディアによる悪意の連鎖は目を逸らしたくなることもあります。もはや真実がどこにあるかなんて関係なく、面白半分にネタを拡散し、いつの間にか真実が捏造される。これがソーシャルメディア上での拡散に飽きたらず、映画版のようにワイドショーで取り上げられれば最後、もはやそれは世間で真実とされます。家族、会社、マスコミ、そして世間を敵に回した個人が勝てる通りはほとんどないでしょう。明日にでも自分が城野美姫と同じ目に遭わないと、誰が言い切れるでしょうか。

真犯人は予想外、しかし違和感もない

これはミステリー小説が原作、もちろん物語はそう簡単に想定できる結末は迎えません。おそらくほとんどの読者・視聴者が想像だにしない人物が真犯人となることに驚くことでしょう。この真犯人、私はまったく想定していませんでした。しかし、殺人までは起こさないにしても、間接的に加害者となっていることはあるんじゃないでしょうか。例えば城野美姫の大学時代の親友・前谷みのり(谷村美月)

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城野美姫を犯人に仕立てる嘘八百の情報をスクープとして放送した番組に対し、みのりは抗議の手紙を送りつけます。それは親友として至極当然の行為のようですが、みのりは美姫を守ろうとしていることを前提にフルネームを世間に晒してしまいます。しかもそれは、真に親友を助けようとした思いからではなく、性の初体験を先に越された嫉妬から起こした行動だったんですね。美姫はそれに気づいてしまった。

みのりと美姫が親友であった事自体は確かです。しかしふとした瞬間に崩れてしまうこともある。みのりは美姫を下に見ていたんですね。おそらくその関係が満たされている限り、ふたりは親友でいれたのかもしれませんね。

100%善良な人間なんて、存在しない

この映画には薄っぺらい性質の人間しか出てきません。主人公の城野美姫は純粋でお人好しな良い女性ですが、そんな彼女だって毒を吐くこともあるし、人を憎む気持ちがないわけではない。その末に殺してやりたいという衝動に駆られることもあるし、決して100%善良な人間というわけではありません。というか、そんな100%善良な人間なんていないんですよ。それがこの映画・小説の素晴らしいところだと思います。とても人間臭い。

ソーシャルメディアがもたらす悪意の連鎖の末に判明する結末に恐怖しつつも、滑稽なまでの人間の愚かさが描かれ、逆に笑ってしまうこともありました。ミステリーとしてよりも、人間活劇として観るほうが面白いかもしれませんね。

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白ゆき姫殺人事件

監督 中村義洋
脚本 林民夫
原作 湊かなえ
製作総指揮 大角正
出演者 井上真央 綾野剛 蓮佛美沙子 菜々緒 金子ノブアキ 貫地谷しほり他
配給 松竹
公開 日本の旗 2014年3月29日
上映時間 126分


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