映画『きっと、うまくいく』 インドは、世界でもっとも自殺率が高い国の一つという事実

『ボリウッド4』公式サイト「きっとうまくいく」

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ベスト・オブ・マサラムービー!!

実は、インド映画を初めてみました。

インド映画といえば「底抜けに明るい」「突然踊り出す」「とにかく長い」と極端なイメージしかないため、エネルギーを使うだろうなぁと覚悟して見始めたのですが、170分という長尺にも関わらず一瞬たりともつまらないところがなく、最後の瞬間まで楽しませてもらえました。というか、ここ数年のうちでベストワンに輝く映画といっても過言ではありません。

インド映画は別名「マサラムービー」と呼ばれているのですが、マサラとはミックススパイスのことで、すなわち笑いや怒り、喜びなどの感情表現が盛り込まれていることを象徴しています!

下記のサイトによると、

”ナヴァ・ラサ”(9つの情感)と呼ばれる、

色気(ラブロマンス)

笑い(コメディー)

哀れ(涙)

勇猛さ(アクション)

恐怖(スリル)

驚き(サスペンス)

憎悪(敵の存在)

怒り(復讐)

平安(ハッピーエンド)

を1本の映画に放り込み、歌&踊りを随所に織り込んで出来上がったエンターテインメントフィルム、それが<マサラムービー>です。

とのことでした。なるほど、「きっと、うまくいく」にはすべて盛り込まれていますね!

※参考

インド新聞 – インドビジネスコラム:インド映画<マサラムービー>の魅力

インド映画に興味を持って調べてみたのですが、年間映画制作本数も映画館観客総数も世界一多い映画大国だそうです。これは正直知りませんでした。てっきりアメリカかどこかかと。

公開される映画は大体が3時間前後の大作モノで、ストーリーは単純明快、わかりやすさがキモとなっています。多種多様な民族が暮らす多言語国家であるインドでは、映画中でも描かれているように、絶対的な階級制度が今も残っています。だからなのか、せめて映画の世界ぐらいは、誰でも辛い浮世を忘れて楽しめるようにつくられているのかもしれませんね。

目を背けたくなるような残酷描写もなく、度を越えた暴力表現もなく、気まずい思いをするような性描写もない。それじゃあ刺激がなくてつまらないんじゃないの?と思うかもしれません。しかし、インド映画の持つ底抜けに楽しい超絶エンターテインメント性は、観る人すべてを幸せにしてくれるでしょう。

Aal Izz Well!(アール・イーズ・ウェル!/うまーくいーく!)

さて、それでは「きっと、うまくいく」のストーリーを簡単に紹介しましょう。↓

きっと、うまくいく – Wikipedia

大学時代親友同士だったファルハーン(クレイシー:R・マダヴァン)とラージュー(シャルマン・ジョーシー)は、ある日同窓のチャトル(オーミー・ヴェイドヤー)から母校に呼び出される。チャトルは二人に、ランチョー(アーミル・カーン)というかつての学友の消息がつかめたことを話し、探しに行こうと持ちかけるのだった。

10年前、インド屈指の難関工科大学ICE(Imperial College of Engineering)。それぞれに家庭の期待を受けて入学してきたファルハーンとラージュー、そして自由奔放な天才ランチョーの三人は寮でルームメイトとなる。何をするにも一緒の3人はしばしばバカ騒ぎをやらかし、学長や秀才だったチャトル等から”3 idiots”(三バカ)と呼ばれ目の敵にされていた。

物語は10年前の大学におけるエピソードと現代のランチョーを探す3人の旅を織り交ぜながら、やがてファルハーン達も知らなかった彼の秘密に迫っていく。

インド人の名前って、なんだか呼びづらい。主人公・ランチョーの本名なんて”ランチョルダース・シャマルダース・チャンチャル”ですからね。

ストーリー自体は大学を舞台とした男同士の友情を描いた学園コメディ系青春映画であり、それに絡めて学長の娘と恋に落ちるラブロマンス映画でもあり、大学卒業後に姿を消したランチョーを探すミステリー映画でもあるという、あらゆるおもしろさを詰め込んだものでした。なのにストーリーが破綻しないというのは凄い。

さて、物語の主人公はインド屈指の難関工科大学ICEの寮で同室になったランチョー・ファルハーン・ラージューの3人。基本的に物語の語り手はファルハーンで、彼の独白によってストーリーが紡がれていく。

この学校では、学生に「知識を得ること」ではなく「点の取り方」を教えていた。インド最高峰の大学という知名度を得るためにただひたすらに学生を勉学に追い立てる学長。ランチョーはそんな学長の思惑通りに動かず、自分の頭で自由に考え、好きなことをやり、ルールを適度に破り、成績の上下など一切意に介さなかった(ランチョーは首席だけど)。そんなランチョーを最初はいぶかしげに見ていたファルハーンとラージューも、いつの間にかランチョーの影響を受けて変わっていき、「本当に自分がやりたいこと」に気づいていく。

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この映画は、そんな大学を彼らが卒業してから10年経ったある日から始まります。

その日と10年前の学生時代を交互に描きながら、卒業後に突然消したランチョーを探しにいくのですが、ここはまさにロードムービー。またこの時の風景が美しいんですよ!どこまでも続く山の稜線に河の流れ。ため息が出るほど美しい。ああ、ブルーレイで観たかった(レンタルはDVDにしかなかったんです…)。

一番見事だと思ったのが、仕掛けられた伏線が全て回収されていくところ。

よく伏線張りっぱなしで回収を忘れている映画がありますが、「きっと、うまくいく」を観終わった後に謎は残りません。綺麗すっきり消えてなくなります。謎を残して観客に推理させるという小賢しい真似は、インド映画には存在しません。もう清々しいくらいに美しい終わり方ですよ。

そして驚いたのが、主演のアーミル・カーンが撮影当時44歳だったという衝撃!普通に大学生を演じていて全く違和感がない。それだけでなく、ファルハーン役のR・マダヴァンは当時39歳、ラージュー役のシャルマン・ジョーシーは当時30歳だったという。インド人は年を取らないのか??

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インドは、世界でもっとも自殺率が高い国の一つという事実

映画の大ヒットを記念して、昨年5月23日に東京・シネマート新宿で映画評論家・町山智浩氏とネルー大学の卒業生・プラサード・バクレ氏によるトークショーが行なわれたのですが、そこで面白い話をなされていましたので紹介します。

町山智浩氏が語る「きっと、うまくいく」の醍醐味 : 映画ニュース – 映画.com

(前略)また、そうした勉強のプレッシャーが学生を死に追いやる実情も。「若い人の自殺は全体の4割くらい。非常に多いです」と、劇中でも描かれる若年層の自殺率の高さを示し、「(自殺は宗教的に)許されていません。自殺未遂した人はまず病院に運ばれますが、その次に逮捕されるんですよ」という事実を明かす。これには町山氏も「ええ! 自殺未遂は犯罪なんですか!?」と驚き、客席も大きくざわついた。

最初に述べたように「底抜けに明るくよく踊る」イメージの強いインドで、自殺率が高いというのは何となく違和感があるような気がします。この若者の自殺問題は映画でも描かれていて、同窓生が勉強へのプレッシャーを苦に自殺する者がいたり、ある人物も友人を売ることを拒み自殺を図ろうとします。

何より、インドでは自殺は「違法」であるという事実に驚きました!自殺未遂した人が病院に運ばれ一命をとりとめても、そのまま逮捕されるなんて・・・。しかし問題は、逮捕されるなんてわかっているはずのインド人が、それでも自殺を選んでしまうような状況に置かれていることでしょう。

インドの自殺問題については以下の記事も参考にさせていただきました。

インドの自殺率上昇、経済発展に伴い15歳〜29歳の若年層が自殺(6月22日) – La Golondrina

インドは、世界でもっとも自殺率が高い国の一つだ。多くの人々は、貧困農家が不作の時に借金を抱えて自殺すると考えていた。しかし、精神科医の研究によると、自殺率の高さは、インド南部の教育、保健衛生、社会保健が整備されているケララ州のような富裕な州の15歳から29歳までの若年層に見られる。

(中略)

「裕福な家庭の若者は、家族から成功するよう強いプレッシャーを与えられ、激しい競争にさらされている。多くの両親は、我が子がクラスで一番になることを望んでいる。それは当然無理だ。」とある精神科医は語る。

インドでは、自殺の多くが報告されていない。インドでは、自殺が未だに違法だとされているからだという。

貧困を苦に自殺するよりも、勉強や就職・仕事・出世を過剰に求められるプレッシャーに耐えかねて死を選ぶ人の方が多いというのは、先進国も先進途上国も一緒なのだなと哀しい気持ちになりました。

邦題について

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「きっと、うまくいく」はもちろん邦題で、原題は「3 Idiots(3人のバカ)」です。

ランチョーがたびたび口にするコトバ「Aal Izz Well!(アール・イーズ・ウェル!/うまーくいーく!)」をそのまま邦題としてしまったことに、この映画本質をついていて見事だなと感心していたのですが、ふとこの映画について調べている際に下記のサイトに辿りつき、なるほどと唸った反論がありましたので引用して紹介させていただきます。

「きっと、うまくいく」の邦題について | バハードゥルシャー勝(まさる)

(前略)

「3 Idiots」の核となるテーマは何であったか。表面上では教育問題を扱っていたが、本質的な部分では人間の心の弱さをテーマとしていた。心は常に最適な道を知っているが、同時に臆病者でもあり、ついつい周囲の雑音に影響されて、願望とは異なったおかしな方向へ行ってしまう。ファルハーンもラージューも、単に落ちこぼれというだけでなく、心の弱い人間で、自らの心の奥底から発せられる声に従わず、勉強にもがきながら迷走ばかりしていた。ランチョーは「Aal Izz Well」というマントラによって彼らの不安定な心を落ち着かせ、彼らを心の声に従わせて、最適な道に導く。「きっと、うまくいく」という訳では、そのニュアンスが出にくい。何か未来のどこかに成功があって、そこに自然に向かうのだという感じになってしまう。そうでなくて、自分の心が本当に欲しているありのままを恐れずに実行しよう、そうすれば成功は後から付いて来る、ということであり、もし映画の本編を見てそこまで読み取れないのならば、題名が誤った方向にミスガイドして行ってしまう恐れがある。

※太字と下線は当ブログ執筆者によるものです。

確かに「きっと、うまくいく」には”未来”を肯定するような意味合いが感じられる。「今はたとえ上手くいっていなくても、きっと未来は明るいものになる!」といった希望的観測による楽観的な未来志向の感が強い。

これはこれで間違っているわけではないのですが、映画中では肯定しているのはあくまで”現状”で、「今の状態でいいんだ、大丈夫」と心を静め、覚悟を決めるために使われているため前者の捉え方で映画を判断してしまうと、本質的な面白さやこの映画が伝えたかったことを誤って理解してしまいかねない。

上記ブログの記事を読むと確かにそう思えます。

きれいに収まった邦題のように見えて、実は内包してるものにズレがあるのかもしれませんね。私は後者のように捉えているので違和感ありませんが、一考に値する記事だと思いました。


『きっと、うまくいく』ボリウッド4予告 – YouTube

町山智浩が映画『きっと、うまくいく』を語る – YouTube

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