映画「渇き。」 疾走感×やりすぎ感×スプラッター=最高のエンタメ!

kawaki

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映画「渇き。」奇跡の映画化!

『第3回このミステリーがすごい!大賞』(2005年)受賞作である「果てしなき渇き」が映画化されました。受賞前からすでに問題作として話題になっていましたが、その描写のあまりの激しさに映像化は難しいとされていた模様。受賞時から9年たった2014年、「告白」「パコと魔法の絵本」 「嫌われ松子の一生」などで有名な中島哲也監督によって、晴れて映像化の運びに。驚くべきことに、小説時の描写の激しさは遜色なく映像化されています。R15指定も頷けますね。

主人公である日本一のクソ親父・藤島昭和を役所広司が、失踪した娘・藤島加奈子には、ファッションモデルで女優の小松菜奈が配役。脇を固めるのは 妻夫木聡、オダギリジョー、二階堂ふみ、橋本愛、黒沢あすか、國村隼、中谷美紀など、めまいがするほど豪華なメンツ。メインを張る登場人物に誰一人まともな人間がいないのが特徴で、笑っちゃうくらいに下劣な人間ばかり。しかしあらためて現実世界を見渡してみても、そう大して違いないじゃな いかと思ったり。所詮人間なんてこんなものですよ、きっと。そういう意味では、この映画は立派な「人間ドラマ」なんじゃないでしょうか。多少ぶっ飛んではいますがね。

まずは簡単なあらすじから。

http://www.cinematoday.jp/movie/T0018159

品行方正だった娘・加奈子(小松菜奈)が部屋に何もかもを残したまま姿を消したと元妻から聞かされ、その行方を追い掛けることにした元刑事で父親 の藤島昭和(役所広司)。自身の性格や言動で家族をバラバラにした彼は、そうした過去には目もくれずに自分が思い描く家族像を取り戻そうと躍起に なって娘の足取りを調べていく。交友関係や行動を丹念にたどるに従って浮き上がる、加奈子の知られざる素顔に驚きを覚える藤島。やがて、ある手掛 かりをつかむが、それと同時に思わぬ事件に直面することになる。

シネマトゥデイより

ひとことで言うなら、失踪した娘を探して方々を奔走する父親の物語、となるでしょうか。この失踪した娘(小松菜奈)はプロモーションにも活用さ れ、渋谷駅の構内などを中心にこんなポスターがズラッと貼られていたのには驚きました。

スライドショーには JavaScript が必要です。

まさに失踪届、ギョッとしちゃいますね。映画のことを知らない人が見たら誤解してしまいそうなクオリティ。ちなみに最後の写真は、女子高生に扮した加奈子の同級生がビラを配っているところ。出くわしたかったものです。

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自分の娘が何者か、あなたは答えられますか?

まさにこれが真のテーマ。

素直でかわいい自分の子どもが裏でどんな顔をしているか、あなたはわかりますか?どんな友だちをもっているのか知っていますか?親目線でこの映画を見ると、ひょっとして自分は子どものことを表面上しか知らないんじゃないか、そんなことを思うかもしれませんね。

物語は、元刑事でいまは警備員として働く藤島昭和がコンビニ強盗殺人に出くわすところから始まります。もうこの時点で凄まじい残酷描写です。満席だった映画館内でも目を背ける女性が多く見られました。この主人公・藤島昭和がビックリするくらいのクズ親父なんですよね。何かにつけていちゃもんつけて怒鳴り散らし、女だろうが子どもだろうが平気で暴力を振るうし、もう目も当てられない。そんな藤島に、別れた妻から電話が入ります。

「加奈子がいなくなっちゃったの」

藤島は消えた加奈子を探して奔走しますが、その性格ゆえにあらゆるところでトラブルに巻き込まれていきます。巻き込まれるだけでなく、自発的に起こしてもいますが。加奈子と仲のいい高校の同級生を始め、中学時代の同級生や元担任などから情報を聞き出すにつれ、藤島は不快感を抱き始めます。品行方正で容姿端麗、学校でも人気のあった加奈子が、実は裏でとんでもないことに手を染めていることを知ったからなんですね。しかも、話を聞けば聞くほど加奈子の姿が大きくなっていきます。もはや想像できる範囲を超えてしまっている。

藤島は苛立ちながらも捜索を続ける。しかし、自分が話を聞いた加奈子の関係者が次々と殺されていくのを目の当たりにして、ついに藤島は発狂する。俺は何のために加奈子を探しているのか?かわいい自分の娘だから?娘の責任は親の責任だから?

いや違う。

加奈子をぶっ殺すためにだ!

自業自得とはいえ、あっというまに転がり落ちていく藤島の人生を直視するのはつらい。ハリウッド映画なら最後には一抹の救いがあるかもしれませんが、「渇き。」にそんなものはありません。どん底まで突き落とされたら自分で這い上がるまでです。藤島がラストで取った行動はまさにそれを表しています。皮肉なことに、最後でやっと父親らしさを取り戻したのかもしれませんね。

血の繋がった親子であっても、結局は他人同士。他人のことをどれだけ知っていると言えるのでしょう?自分の前で見せる姿が全てだと思っているのだとしたら、それは非常に愚かなことです。人は誰しも、いくつもの仮面を持っています。「誰に対しても変わらない自分」というと聞こえはいいですが、自分の親と会社の上司に対して、同じ自分で接する人はいないでしょう。それはむしろ失礼にあたります。別に悪いことでもなんでもなく、その人に合わせた自分を出すのが人間というものではないでしょうか。確固たる「本当の自分」なんてものは存在せず、平行していくつもの仮面を使い分けるのが自然ではありませんか。

つまり、あなたの前で見せる姿だけが娘の全てではないということです。盲目的に誰かを信じているタイプの人にとっては、胸をえぐられるような痛みをともなう映画となるでしょう。

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「告白」を上回るバイオレンスさ

この映画の監督は中島哲也氏。松たか子の怪演が印象深い「告白」を撮った監督として有名ですね。告白は、人間の闇というか澱のようなものを低い温度でまき散らす悪意の塊のような映画でしたが、「渇き。」はその表現に磨きがかかっています。告白に比べるとわかりやすいバイオレンスシーンが多いのでどうしてもそういった残酷描写に目がいってしまいますが、「渇き。」の真髄は、信じていたいもの・信じるべきものに徹底的に裏切られる残酷さにあるんじゃないかと思います。もうここで終わりにしてくれ、と思うようなところで必ず期待を裏切る何かが見つかり、さらに謎が深まる。謎をひとつ解く度に謎が増え、事態はどんどん重く深くなっていく。悪い、悪い方向へ…。

あまりにコロコロ人が死んでいくので、なかば「悪の教典」のような善悪の彼岸に立ちすくむ気分になりますね。中でも「渇き。」がおもしろいのは、だれひとりまともな人間がいないところ。特に警察の腐りっぷりが見事で、藤島が元刑事でありながらあらゆるものを信用していない気持ちが少しわかる気がしました。常にチュッパチャップスをニヤニヤしながら舐めている浅井(妻夫木聡)なんかには嫌悪感しか抱けません。これだけ救いのない映画なのに見終わった後イヤな気分にならずむしろ笑ってしまいたくなるのは、次々とこういった善人面した悪人が始末されていくからかもしれません(趣味悪い)。北野武監督の「アウトレイジ」に近いものがあるかもしれませんね。

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超特急のエンターテインメントとしてオススメします!

とまぁ、いろいろと暗い話もしましたが、結局この映画はエンターテインメント映画として観るのが正解だと思います。もうひとりの主人公でありながらあまり表に出てこない加奈子を巡り、父親とギャングとヤクザと警察と加奈子を崇拝するいじめられっ子がしっちゃかめっちゃかしながら暴れ回る、極上のエンタメムービーですよ。

もちろん中には親子愛・友情・人を信じるとは?…といった考えさせられるテーマも盛り込まれてはいますが、最初に鑑賞した際にはきっと理解しがたいと思います。というのも原作小説である「果てしなき渇き」と比べて、はしょられている部分が結構多いんです。ですので、何故そこでそうなるのか、よくわからないところも多いでしょう。解読するのに重要な部分が省略されていたりするので、あえてそうしているのかもしれません。これだけスプラッタなシーンを続けざまに見せられる映画でありながら、謎が気になるからもう一度観ようかとなりますから。

※ちなみに、何度観てもよくわからないという人のために解説記事をアップしている方がいらっしゃいましたので引用しておきます↓

『渇き。』がわからなかった人向けの解説(ネタバレ有り)



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