映画『愛の渦』 「着衣時間わずか18分」に惑わされるな!描かれているのは普遍的な人間ドラマだ。

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「着衣時間わずか18分」

衝撃のキャッチコピーで大ヒット中のR18映画『愛の渦』を観てきました。

映画「愛の渦」公式サイト

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岸田國士戯曲賞受賞作の映画版『愛の渦』

監督は劇団「ポツドール」の三浦大輔。本作は『ボーイズ・オン・ザ・ラン』に続く2作目の映画化作品。元々『愛の渦』は劇団ポツドールの舞台劇だったんですね。確かに舞台はマンションの一室のみ。実に舞台劇にピッタリの題材です。

多数のメディアに取り上げられ話題になったように、本作で描かれているのは『乱交パーティ』!あまりこういった世界に縁のない人が多いかと思いますが、きっと噂くらいは聞いたことがあるはず。複数の男女が欲望のままに体を求め合う、人間がむき出しになる世界。「関わるのは怖い…だけどちょっと覗いてみたい。」それが本音ではないでしょうか。その夢(?)を意外なカタチで叶えてくれる、人間ドラマを描いた映画でした。

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門脇麦、『愛の渦』過激シーンの喘ぎ声を「カラオケボックスで練習した」 | マイナビニュース

出演者は池松壮亮(ニート)、新井浩文(フリーター)、滝藤賢一(サラリーマン)、門脇麦(女子大生)、中村映里子(保育士)、三津谷葉子(OL)、赤澤セリ(常連)、駒木根隆介(童貞)、柄本時生(カップル)、信江勇(カップル)、窪塚洋介(店員)、田中哲二(店長)と、そうそうたるメンバー。

※ちなみにカッコ書きは公式HPより引用。

大体こういった場合はカッコ書き部分が役名だったりしますよね。なのに本作では職業や役割になっています。簡単な話で、乱交パーティを描くのに「名前」はいらないんです。これから欲望のままにセックスするというのに、自己紹介なんて必要ありません。何なら「職業は何か」なんてことも必要ないんですよね。なのになぜ職業が紹介されているのか。それは大事なところなので後で述べます。

私が観にいった日は、最終上映を4日後に控えた最後のサービスデー・水曜日。大作でもないかぎり映画なんて最終日に近づくにつれて観客は減っていくもの。時間や曜日によっては貸し切り状態で観られることもあります。にも関わらず、この日の最終上映時間に観た「愛の渦」は、ほぼ満席でした。しかもほとんどが「女性のひとり客」!確かに池松くんの女性ファンは多いと思いますが、こういったテーマの映画にこんなにも多くの女性がひとりで行くとは、正直驚きました。

※なおヒューマントラストシネマ渋谷では、ひとりで入りづらい女性客のために女性限定上映回を設けていました。

ちなみに私が観にいった新宿テアトルシネマでは、このような展示がお出迎え。昔ながらの雑誌切り抜きでつくられたPOPがかわいらしい。

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乱交パーティの始まりは意外な程静かに。

※ここからは大胆にネタバレします。

都内、おそらくは六本木あたりにあるマンションの301号室。そこが乱交パーティの舞台となる場所だ。

午後23時。

続々と参加者がマンションを訪れ、店員に金を払い、荷物や服を入れる袋を渡されシャワーを浴びてスタンバイする。念入りに体を洗い、口内を殺菌する。このあたりは風俗店と同じ。というか、「乱交パーティ」もいわゆる風俗の一種なんだということをここで思い知ります。終わったらバスタオルを体に巻いて、リビングルームに集合。開始となる0時をみんなで待つ。

午前0時。

店長がリビングに現れ、参加メンバーにルールを説明。何、当たり前のことばかりです。

「トイレに行ったら必ずシャワーを浴びる」

「セックスが終わって、次の相手とする前には必ずシャワーを浴びる」

「コンドームは必ず着ける」

特にコンドームの使用法について、店長の説明は非常に繊細かつ丁寧でした。

「事が済んだら、ちゃんとモノの根元を指で抑えて女性器から抜く。そうしないと、女性の中に忘れてきてしまう人がいますから」なんてことまで説明されますから。大小2サイズのコンドームを用意しているので、最初は見栄をはらず小さい方から着けてくださいとも言われます。

もうこの時点で想像と違いました。何といいますか、乱交パーティという名前から想像できるのは『もっと勢いのままに男性が女性を、女性が男性を捕まえ、場所もどこだか知ったことではなく、そこかしこでセックスが始まる』といったものではないでしょうか(ひょっとすると海外ではそんな感じのパーティなのかもしれませんが)。なんとも日本人らしいおとなしいスタートを切っていて、この時点で笑ってしまいそうになりました。

このイベントの目的は「乱交」。間違いなく朝までヤりまくりたい男女が集まっているわけですからやることはひとつなのに、店長が一通りの説明を終え「それでは朝5時までお楽しみください」と告げ去っていったあと、奇妙な程の静けさがあたりを包みます。

誰も「さぁ、朝までヤりまくろうぜ!」なんて言わず、それぞれが人の出方を待って様子を伺っているこの空気感、実に気まずい。グループワークが苦手な日本人が、司会者がいなくなった後に誰が先陣を切るのか様子見しているような光景を思い浮かべてしまいそうになります。

この気まずい空気を最初に切り開いたのはOL(三津谷葉子)。といっても、声をかけたのは男ではなくて隣に座っていた保育士(中村映里子)に。しかも聞くのは「私こういうのはじめてなんですが、よく来られるんですか?」といった定番の話。その後フリーター(新井浩文)やサラリーマン(滝藤賢一)を交えてこの4人で盛り上がり、まずはフリーターがOLを階下のプレイルームに誘う。それからややあってから階下より聞こえてきた喘ぎ声に触発されたか、サラリーマンが保育士を誘い、童貞(駒木根隆介)が常連(赤澤セリ)を誘う。最後に、余ったニートと女子大生がプレイルームに向かう…。

こんな感じでぎこちなく乱交パーティがスタートしましたが、意外なほどに「乱れ交わる」シーンが出てこない。プレイルームには4台のベッドが四隅に置かれているのですが、4組が同時にセックスしているのはたったのワンシーン。タイトルを象徴するように、4組が絡み合うところを頭上にあるカメラが渦のように回りながら撮るシーンのみなんです。

気まずい会話シーンで「人に見られてするのは大丈夫?」といった質問が出たりしているように、乱交なのですから当然人のセックスを目の当たりにするわけですが、それも然程描かれてはいません。むしろ1組ずつセックスするような流れができているような印象さえ受けました。こんな気まずい感じで朝5時までセックスって、どんだけ苦行なんだよってレベルですよ、これは。

ちなみに、その気まずいシーンでサラリーマンが、実にサラリーマンらしいことを皆に質問します。「皆さんはどんな職業なんですか?」これには笑いました。どうだっていいじゃないですか、そんなもんこの場所じゃ。まぁこのおかげでそれぞれのメンバーに「名前」ができたのですが。ちなみに二声目の「どこ出身なんですか?」で、さらにとどめを刺された気分でした。

セックスシーンはおまけに過ぎない。大事なのは人間の本質はどこにいても変わらないということ。

『123分の上映時間中、18分しか服を着ていない』という過激なR18+映画という売り出し方は、ある意味では客を満足させることはできなかったかもしれません。この記事を書く前にいろいろなレビューを参照しましたが、やはりAV並のセックスや過剰なほどのエロシーンを期待して観にいき、悪い意味でショックを受けた人が多くいることがわかりました。

確かにそういった俗な見方もおもしろいとは思いますが、私にとってこの映画は「会話劇」であり、「人間ドラマ」であり、「喜劇」でした。

会話劇というのは言わずもがな、この映画のキモは「会話」にあるからです。ぎこちないスタートを切ったリビングでの会話、途中でまき散らされる罵倒・中傷・嫉妬のコトバ、明け方3時頃に現れるカップル(柄本時生・信江勇)が繰り広げる「高度なギャグ」、そして最後のニートと女子大生が交わす会話…。

人間の根底にあるゲスさや、相手を出し抜きたいという欲望、自分は他の人間より優れていると思いたい心、決して誰にも求められない人間ではないと思いたい本音など、この映画のおもしろさは全て「会話」に含められているといっても過言ではないでしょう。会話の中に人間ドラマがあり、こんなに自分を解放できる場でありながらも「日常の自分」がついつい出てきてしまう滑稽なシーンは、まさに人間ドラマ!

私は基本的に「人間ドラマが描かれている邦画」しか映画は観ない傾向にあるのですが、『愛の渦』はそういった意味で素晴らしい映画でした。テーマがテーマなのでエロが先行してイメージ付けられている感は否めませんが、R18+というほどにはエロくないですし、画面上でセックスするために四苦八苦しているメンバーと、観客として観ているこちら側の人間にたいした違いがないことに気付けると、人間ドラマとしておもしろく観ることができるんじゃないかと思います。

あと、池松くんは言わずもがな魅力たっぷりなんですが、今作での注目はヒロインの「門脇麦」ちゃんでしょう!決して“絶世の美女”といった容姿ではないのですが「実は強大な性欲を内に隠し持った女子大生」という難役を、その怯えたような表情とカラオケボックスで練習したという喘ぎ声で見事にこなされました。その演技力には脱帽です。今後の出演作をおっかけていきたいと思います!

【インタビュー】『愛の渦』池松壮亮×門脇麦 大胆セックスシーンによる“裸の共犯関係” | シネマカフェ cinemacafe.net

最後に、有名ブロガーのはせ おやさいさんが、この映画のレビューでいいことを仰っていたので引用させていただきます。

映画「愛の渦」を見てきたよ – インターネットの備忘録

個人的には見終えた後、欲望というか渇望とか妥協とか自意識、変なプライドでこんがらがって身動きが取れなくなるよりも、死ぬかもしれないけど欲しいものに向かって思い切り飛ぼうぜ、というスカッとした気持ちになりました。

自意識もプライドも自分の中ではすごく重大なことっぽく感じているけど、思ってるよりどうでもよくて、そんなのに囚われているのは自分だけなのかもしれなくて、もっと自分本位で振る舞ってもいいのかもしれない(しかし常識の範囲内で)、みたいな感じ。

映画の登場人物たちを笑って見ているわたしも、実際は彼らと大差なくて、カッコ悪いくせにカッコつけてて、でもダサくて、みっともなくて、でもそれでいいじゃん、っていう。 

※あまりにも池松くんの佇まいや演技が好きなので、出演作をご紹介。

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