映画『四十九日のレシピ』  死者の生き様は、生者によって紡がれる。

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『子供のいない女の人生って、空白ばっかりなのね。』

主人公・高岩百合子(永作博美)は、亡き義母・乙美を送るためにつくった空白だらけの年表を見てそう呟く。幼い頃に亡くした母の代わりにやってきた、新しい母。うまく折り合えなかったこの義母の人生を、自分は何も知らなかったことに愕然とする百合子と、その父・良平(石橋蓮司)。遺された父と娘は、義母が一枚一枚丹念につくった『レシピ』に従って四十九日を送り、義母を弔うことを決める。レシピといってもそれは単なる料理だけではなく、乙美がいなくなったあとも変わらず過ごせるように、日々の暮らし方についてかわいい絵とシンプルなコトバで描かれた、いわば処方箋のようなもの。

例えば掃除の仕方。掃除機は重いから週に1、2回でじゅうぶん。普段はクイックルワイパーでOK。

例えばコロッケパンの作り方。コロッケにはこれでもか!っていうぐらいソースをかけておけば冷めても美味しい。

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ひとつひとつは大したものじゃない。誰にでもできること。

でも、日々の暮らしって案外そんなことの繰り返しじゃないか。

誰に褒められるわけでもなく、報酬が貰えるわけでもない。そう、それは『勤め』ではなく『務め』と呼べるものかもしれない。読み方は同じでも、内実は全く違う。
※プログラムに寄稿された、暮しの手帖編集長・松浦弥太郎さんのコトバを引用しました。

幼い頃に空襲で父以外の身内を亡くした義母の乙美。父に雁字搦めにされながら育ち、社会に出ることに臆病になった乙美は、あるお祭りで出会った良平とお見合いをすることになった。しかし良平は会うこともせずに断った。その理由を聞きに乙美は良平の家を訪れ、話をしているうちにこのようなことを呟いた。

『このお見合い、無くなってよかったのかもしれません。幼いころに父以外の身内を亡くして、私は母を知らずに生きてきました。そんな私が母になるなんて…。私には普通の家庭というものが分からないんです。』

実は良平も母のいない家庭で育ち、普通の家庭がどんなものか分からなかった。結局、このコトバが良平を動かし、紆余曲折ののち夫婦となった。

普通の家庭が分からない夫婦。乙美はそのことをずっと心配していた。私には『母』という役割がこなせているのか?だから、日々の暮らし方ひとつひとつも大事にしてきた。暮らしのレシピ=処方箋としてカードに記録し、折にふれて眺めていたんだろう。

最後のページにはシンプルに、四十九日最後は大宴会をしてと書かれていた。事細かに書かれていたレシピの中で、これだけが抽象的で違和感があった。ひょっとすると、あとで追加したのかもしれない。最後にちょっとしたわがままを入れたかったのかもしれない。そして、物語は大宴会を開くために紡がれていく・・・。

人それぞれの価値観

この映画は、観た人に「人にはそれぞれの価値観がある」ことを改めて考えさせてくれる。
子どもをつくるのもつくらないのも、家庭を持つのも持たないのも。
良平の姉は、子どもをつくることが母の役割としてもっとも重要なことだから、子どもをつくらず(つくれず)離婚にまで踏み切ろうとしている百合子をこれでもかと言わんばかりになじる。もう、見ていられないほどに。古い時代の価値観をそのまま押し付けてくるこの姉に、現代に生きる私たちや百合子は強い憤りを覚えるでしょう。

しかし、それも価値観なのだ。押し付けられる筋合いはないけれど、価値観を否定するのも違うだろう。百合子の偉いところは、「あなたの考え方は古いんだ!」となじることはしなかったこと。自分のことは自分で考える。ですから、「そっと見守っていてください。」と告げる。これはとても勇気のいることだし、なにより苦しい。

人は困ったとき、誰かに判断を委ねてしまうことがある。でも、それが必ずしも正しいとは限らないし、正しくなかったときには相手に責任を押し付けてしまうこともある。映画中、離婚を考えている百合子に良平は最初「答え」を与えていた。しかし、最後には「自分で決めろ」と突き放した。これはとても愛情のある表現ではないかと思います。人は簡単に答えを与えられると考えなくなるから。

百合子が最後に自分で選んだ選択は、私はベストだとは思わない。むしろその選択はありえないとさえ感じる。ですがそれは、百合子が今まで「自分で選択して結婚した夫」と過ごした時間があったゆえに選べた結論。百合子は、それを自分で選んだのですから。

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乙美の生き様

 映画のラスト、乙美の年表は思わぬ形で彩られていきます。その美しさに私は号泣しました。人の生き様は、得てしてその家族の知らないところで起こる出来事で描かれるものなのでしょう。よく考えれば、私が家族の生き様年表をつくるとして、死ぬまでの1年1年をすべて埋めることはできません。必ず空白の期間ができるだろうと思います。ですが、それは故人が今まで関わってきた人に埋めてもらえばいい。人生を過ごす場所は、家族の居所だけではないのです。乙美の人生はとても幸せだったのだろうと、きっと思えるはず。

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 物語を彩る助演たち

基本的には百合子と良平のふたりを中心とした物語ですが、四十九日を終えるためのお手伝いをしてくれる助演が3人。
・イモ(二階堂ふみ)
・ハル(岡田将生)
・原田泰造(高岩浩之)
芸達者なこの3人が盛り上げてくれました。

特に私の大好きな二階堂ふみちゃんが終始「ゴスロリ衣装」で出演しているのが最高でした。もともとふみちゃん自身がゴスロリ衣装が好きだったことから、衣装の作り込みは半端ないですね!原作小説では「自分に自信が無いから化粧で隠している」というキャラクター設定からガングロギャルだったのですが、時代を考えてゴスロリになったそうですよ。ふみちゃん演じる「イモ」も、物語を通して成長していきます。
※ちなみにふみちゃんのこのシーンが悶絶モノのかわいさでした。
http://info.movies.yahoo.co.jp/detail/tyca/id345696/
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終わりに・・・

正直あまり期待していなかったのですが、かなりの傑作です。永作博美の泣き笑いの表情は、「八日目の蝉」を凌ぐ美しさ&哀しさでした。

ラストにはいろんな意見があると思います。ですが人間にはそれぞれ価値観があるのだから、折り合いをつけて、そして自分の頭で考えて生きていけば、それでいいのではないでしょうか。

ぜひ映画館でご覧になってみてください。

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